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第一話 ③

작가: 上守葉
last update 최신 업데이트: 2025-12-01 03:19:50

 火族四家かぞくよんけの当主となる者は、年齢性別問わずに刀に選ばれた者が指名される。

 勿論、刀に選ばれるのは火族四家の血縁者のみだ。

 しかし、もし当主として選ばれても、灯守に選ばれなければ夜住に対抗する力は得られない。

 灯守とうもりの〝あかり〟は、代々受け継がれていく刀にしか受け入れられないという。

 実際に確認した事はないが、少なくとも灯守が力を与えるのは、当主の刀にだけだ。

 当主は刀の主として選ばれる事で灯守の力を与えられ、夜住を討祓できる力を得る。

 ただの怪異であれば普通の刀でも討祓とうばつ出来るが、夜住に対抗出来るのは灯守の力を得た刀主の刀だけ。

 つまりは、実質当主を選ぶのは灯守であり、当主は刀と灯守に選ばれてようやく戦える力を得るのだ。

 ゆえに、当主は刀主とうしゅと呼ばれる事もあり、各家の家門のはいった鍔と鞘がその証明となる。

 今、俺の少し前を走っている少女の羽織にも、御神苗おみなえ家の家門が仰々しく刻まれていた。

 御神苗和穗おみなえ かずほは、まだ17の数え年にも関わらず次期当主として選ばれた少女だ。

 刀は彼女の身の丈ほどもあるのに、和穗はそれを難なく振るって見せる。

 彼女を前にしていると、普段ならば重いと感じる刀も恥ずかしく感じる程だ。

《此処に在りしは、土の御子──》

 どこからともなく聞こえてきた祝詞を受けるように、和穗が刀を振り上げる。

 俺も、聞き慣れた声には今更視線を向けず、空を舞う先生の角灯ランタンの先だけを追っていた。

いしずえよ、夜を塞ぎ、道を築き、我がともしびもって穢れをしずめよっ》

 和穗の刀身が赤く光り、周囲を照らし出す。

 それでも払えぬ闇は、即座にひるがえった和穗の刀が薙ぎ払った。

 先生が示す先は、もう少し向こうだ。

 俺は、和穗が祓った闇を飛び越えて、更に前へ前へ、進む。

 夜住──この帝都に住まう、夜の闇の体現者。

 その姿はただの真っ黒な塊であると言われているが、俺たち刀主は知っている。

 本当の夜住の姿は、決してただ黒いだけではないという事を。

『あ"ぁ……コロスコロス……コロス……』

 先を封じる垣根を越えて、更にその先の真っ黒い壁へ跳ぶ。

 真っ黒い壁は、先生の角灯の灯を受けても黒いままで、よくよく見れば蠢いても見える。

 壁自体が動いているわけではない。

 黒い壁一面に浮かんでいる、疱瘡のようなブツブツが──人間の顔が、呻きながら蠢いているのだ。

 疱瘡ほどの大きさの人間の顔は、呻きながら呪詛を吐く。

 呪詛は黒い吐瀉物として吐き出され、ビシャビシャと地面を汚した。

 そのまま呪詛は夜住の這った痕を真っ黒く染めて、そこに触れた者もまた黒く染めていく。

「大きいよぉ~」

「わかってます」

 空中に居る先生が、角灯の灯を俺に向ける。

 黒い壁に重なる家と垣根の影は、それだけで白く周囲に溶けていった。

 残っているのは、俺と、黒い壁の夜住だけ。

 俺は、夜住へ向けて先生の〝灯〟の宿った刀を振りかざした。

 この黒い壁の夜住は、刀持ちの間では「塗壁ぬりかべ」と呼ばれる妖怪の一種だ。

 病気を患い家の中で死んだ人間の恨み辛みを食って夜住となり、その呪詛を吐いて周囲を染めていく。

 最悪なのは、本体がまるで壁のように見えるせいで一般市民すらも一瞬夜住であると認識出来ない事だ。

 気付かずに近付いて、黒い吐瀉物や塗壁本体に触れて、黒く汚染されてしまう──

 そうして、夜住憑よすみつきになって、本当の病を患ってしまうのだ。

 まったくもってタチの悪い事この上ないが、塗壁はただデカく、周囲を汚染するだけで怖くはない。

 吐き出される汚物を回避する速度と、一刀両断出来るだけの力があれば、難敵ですらないのだ。

 俺は、一足跳びに塗壁に肉迫すると、疱瘡を踏み潰しながら一太刀で壁を真っ二つにして見せた。

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